地球温暖化や原発事故により、自然再生エネルギーに大きな期待がかけられている。本研究は、海洋の未利用バイオマスである海藻を原料としたバイオエタノール生産を行うことを目的としている。ここでは、緑藻(アオサ)、褐藻(アカモク、スジメ)、紅藻(オゴノリ)を使用した。特にスジメに関しては、北海道水試にてアルギン酸を抽出した残渣を用いたバイオエタノール生産を行った。さらにバイオエタノール生産残渣は広島大へ送付し、メタン生産へと供することで、褐藻類のカスケード利用を試みた。
海藻の糖化により生成したグルコースは、海藻重量当たりアオサ(8.5%)、アカモク(5.5%)、スジメアルギン酸抽出残渣(20.4%)であり、カスケード利用の有効性が実証された。事前の研究で高発酵であることが実証されている各酵母株を使用したところ、海洋由来Saccharomyces cerevisiae C19株の発酵効率が最大で、原料重量当たりアオサ(5.7%)、アカモク(5.5%)、スジメアルギン酸抽出残渣(9.0%)であった。
発酵液の蒸留により、精製エタノール(約90%)をえることができた。以上、本研究により海藻原料からのバイオエタノール生産の基礎技術を確立することができた。今後は残存する糖分をより効率的に発酵する技術を開発して行く予定である。
「環境関連」カテゴリーアーカイブ
食品廃棄を考慮した凍結食品の環境影響評価
現在、日本の食品ロスは年間約500万~900万トンと推計され、これは食用向け農林水産物の約5~10%、食品由来の廃棄物の約30~50%を占めると言われている。この問題を解決する有力な手段の一つとして冷凍が挙げられる。冷凍は、ほぼあらゆる食品に対して、タンパク変性等の不可逆変化を最小限に抑えながらシェルフライフを延長できるためである。だが一般に、冷凍はエネルギー多消費型の保存技術であり、持続的発展可能社会を目指す潮流にはそぐわないと考えられがちである。しかし実際には、食品ロスに伴う環境負荷が減少させられれば、冷凍保存のライフサイクルでの環境負荷は、他の保存法よりも小さくなる可能性がある。本研究では、ハンバーグを対象として、チルドと冷凍の2通りの流通形態のLCAを行い、両者の環境負荷の定量的な比較を試みる。
Influence of Impurities in TiO2 Coatings on Electrode Potential of Photocatalytic Anode Assembling to Marine Microbial Fuel Cell
海洋微生物燃料電池組込用アノード電極に使用するTiO2半導体電極について、皮膜要素であるTiO2粉体の純度が電極特性に及ぼす影響を調べた。TiO2純度95.2%では、光照射後に電極表面に斑点状のしみが発生し、かつ光電位の低下効果について抑制作用が現れた。この「しみ」の部分を走査型電子顕微鏡ならびに、エネルギー分散型X線分析装置を使って調べたところ、不純物元素であるSiやZrの酸化物が検出された。また、表面電位プローブにより表面電位分布を測定したところ、この部分で局所的に電位が高い(電位低下の抑制作用が大きい)ことがわかった。以上の結果から、繰り返し光照射を行うTiO2電極においては、TiO2純度を高める必要があり、TiO2純度99.9%の場合は、上記の発生が起こらないことが確認された。これにより、安定的な発電素子として、本TiO2電極が使用可能となった。
メカジキ好漁場の選定に関する研究
マグロ・カジキ類の好漁場が広大な海洋の何処で形成されるかを正確に知る事が出来れば、漁業効率を向上させる事ができるだけでなく、資源量のより正確な推定を行う事が可能となる。海面水温情報で得られる水温に関する情報は、浮魚類が適水温の範囲で棲息する傾向をもつため、有力な漁場選定要素となる。また、比較的深い水深でも回遊を行うマグロ・カジキ類にとっては、表面の情報だけでなく、海洋内部の海水密度構造に強く影響を受けた海面の凹凸の情報(海面高度)も有益な情報といえる。加えて、海面高度情報は、海面の流れを与え得るため、大規模な流れ場の特徴と、漁場とを関係づけるのに用いることができる。
海藻凝集剤
コンブやワカメなどの褐藻類を原料として、固液分離(懸濁汚水の浄化)に用いる凝集剤を調製する工程、原理、凝集剤の性能について紹介します。
調製工程の特徴は、抽出(成分分離)を行わない点にあり、このため海藻凝集剤は原料海藻の成分をほぼそのまま含んでいます。したがって、製造工程は極めてシンプルであり、特殊な装置や試薬を必要としません。
また、海藻に含まれる成分のうち、凝集作用を持つものはアルギン酸ですが、市販の精製アルギン酸よりも高い凝集性能を示します。最も広範にしようされるPACと比較すると、凝集効果は同等で、かつ、事前のpH調製が不要、処理後のpHを変化させないという利点があります。