大学等研究機関別カテゴリ」カテゴリーアーカイブ

閉鎖循環式養殖に有効な「好気的脱窒装置」

⽔⽣⽣物を閉鎖循環システムで飼育する際、飼育する⽔⽣⽣物の代謝により排出されたアンモニア態窒素の処理が課題となる。アンモニア態窒素は、⿂に対して悪影響を及ぼし、悪臭の原因となる為、除去が必要である。除去のためには、硝化細菌、脱窒菌を利⽤した好気的環境の硝化槽と嫌気的環境の脱窒槽を設ける⽅法が⼀般的である。しかし、特に脱窒槽の設置に当たっては

  1. 嫌気的環境構築の困難性
  2. 硫化⽔素発⽣リスクへの危惧
  3. 脱窒菌への餌(炭素源)供給制御の難しさ

等の課題から、事業への活⽤がほとんどされていなかった。

これらの課題解決のために、研究者は多孔質セルロースを担体を用いた間欠ろ過により好気的脱窒を実現、簡易かつ⼩型の⿂介類飼育⽤の⽔処理装置を開発した。

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定置網用ウミガメ脱出装置の開発

ウミガメ類は絶滅危惧種とされ、個体数減少の要因の一つとして、漁業における混獲(意図せず漁獲されること)による死亡が指摘されている。

 我が国沿岸の砂浜で産卵が行われる北太平洋のアカウミガメ個体群は、米国が絶滅危惧種に指定するなど、資源状態に対する極めて関心が高い。

 そうした中、我が国の主要な沿岸漁業の一つである定置網において、アカウミガメ等の混獲がしばしば報告されている。特に魚捕部である箱網が海中に沈めて敷設される中層・底層定置網では入網個体が死亡する可能性が極めて高いが、これまで具体的な対策手法は無かった。

本研究では、漁獲物を逃がさずに、ウミガメだけが自発的に網外に脱出できる装置(ウミガメ脱出装置)の開発に取り組んだ。ウミガメを漁網から逃がす装置として、トロール網用ウミガメ排除装置(TED: Turtle Excluder Device)があるが、定置網は海中に固定される漁具であるため、ウミガメを自発的に脱出させる必要がある。

冷凍庫で1年間冷凍した魚から次世代が産まれました!

吉崎悟朗教授(海洋生物資源学部門)の研究グループは、1年間冷凍庫内で凍結していたニジマスから機能的な卵と精子を生産し、これらを受精することで正常な次世代個体を生産することに成功しました。本法を用いることで、絶滅危惧種を冷凍庫内で冷凍しておきさえすれば、たとえ当該種が絶滅した場合でも、現存する近縁種に冷凍魚由来の精原細胞を移植し、絶滅種の卵や精子を、ひいては受精を介して“生きた魚類個体”をいつでも再生することが可能になりました。

冷凍庫で1年間冷凍した魚から次世代が産まれました

水圏植物を原料とするバイオエタノールの製造-VII ~海藻を原料としたエタノール生産~

地球温暖化や原発事故により、自然再生エネルギーに大きな期待がかけられている。本研究は、海洋の未利用バイオマスである海藻を原料としたバイオエタノール生産を行うことを目的としている。ここでは、緑藻(アオサ)、褐藻(アカモク、スジメ)、紅藻(オゴノリ)を使用した。特にスジメに関しては、北海道水試にてアルギン酸を抽出した残渣を用いたバイオエタノール生産を行った。さらにバイオエタノール生産残渣は広島大へ送付し、メタン生産へと供することで、褐藻類のカスケード利用を試みた。
海藻の糖化により生成したグルコースは、海藻重量当たりアオサ(8.5%)、アカモク(5.5%)、スジメアルギン酸抽出残渣(20.4%)であり、カスケード利用の有効性が実証された。事前の研究で高発酵であることが実証されている各酵母株を使用したところ、海洋由来Saccharomyces cerevisiae C19株の発酵効率が最大で、原料重量当たりアオサ(5.7%)、アカモク(5.5%)、スジメアルギン酸抽出残渣(9.0%)であった。
発酵液の蒸留により、精製エタノール(約90%)をえることができた。以上、本研究により海藻原料からのバイオエタノール生産の基礎技術を確立することができた。今後は残存する糖分をより効率的に発酵する技術を開発して行く予定である。

水圏植物を原料とするバイオエタノールの製造-VII~海藻を原料としたエタノール生産~

水圏植物を原料とするバイオエタノールの製造-VII~海藻を原料としたエタノール生産~

カロテノイド高生産天然酵母の解析と魚餌料への応用

カロテノイドは養殖マダイやサケなどの体色や肉質の改善目的で餌料に添加される。しかし使用されるカロテノイドの多くは石油成分由来の合成カロテノイドであるため消費者の要求から天然由来のカロテノイドが求められる。また、合成カロテノイドは高価であり、安価なカロテノイド源が求められている。本研究室では環境からカロテノイド生産酵母を探索した結果、相模川からカロテノイド高生産酵母Sag17(Rhodotorula glitinus)を得た。さらにSag17に変異をかけてカロテノイド高生産酵母Sag17-3を得た。本研究ではSag17-3含有餌料を用いた飼育試験で有用性を調べるとともに大規模培養における効率的カロテノイド生産条件の検討を目的とする。また2010年に環境から単離したカロテノイド高生産酵母Heb3について併せて報告する。

カロテノイド高生産天然酵母の解析と魚餌料への応用

カロテノイド高生産天然酵母の解析と魚餌料への応用

カツオの品質保持に及ぼす脱水シートの影響

脱水シートは2枚の食品用半透膜フィルムの間に,高濃度の食用糖類と食用糊料をはさんだ構造になっており,浸透圧を利用して食品から水分を取り除くことができるシートである.これまでに,脱水シートそのものの詳細な性質評価に加え,魚介類を包装した際の脂質酸化防止や調理性向上効果についての報告がなされてきた.当研究室においても鮮魚の品質保持効果に関して,サバ類,イワシ類,タラ類,ブリ及びサンマについて,VBN抑制効果とK値の上昇抑制効果があることを精査してきた(濱田ら2002,2003).本研究ではカツオを対象として,多角的角度から品質保持に及ぼす脱水シートの影響について検討を行うことを目的とした.

 

カツオの品質保持に及ぼす脱水シートの影響

カツオの品質保持に及ぼす脱水シートの影響

海洋由来発酵酵母による都市型廃棄物を原料とした効率的バイオエタノール生産

日本では、農業系廃棄物を中心にバイオエタノール生産が実用段階にあるが、コスト高である。そこで都市型バイオマスをバイオエタノール生産原料に利用することが考えられる。本研究では、オフィスでの大量廃棄物であるシュレッダー裁断紙と茶殻を原料とし、糖化条件と、水圏由来発酵酵母での効率的な発酵条件の検討を行う。

高発酵酵母中でも、海洋由来酵母Saccharomyces cerevisiae C-19株はエタノール発酵収率が平均的に最も高かった。茶殻(12 g)からは788 mgのエタノール量、裁断紙(12 g)からは2.69 gのエタノール量が生成され、後者の発酵収率は80%にも及んだ。茶殻糖化に原料凍結酵素真空含浸法、裁断紙糖化に非硫酸法を開発したことにより、安全かつ環境負荷の少ないエタノール発酵を可能とした。

海洋由来発酵酵母による都市型廃棄物を原料とした効率的バイオエタノール生産

海洋由来発酵酵母による都市型廃棄物を原料とした効率的バイオエタノール生産

食品廃棄を考慮した凍結食品の環境影響評価

現在、日本の食品ロスは年間約500万~900万トンと推計され、これは食用向け農林水産物の約5~10%、食品由来の廃棄物の約30~50%を占めると言われている。この問題を解決する有力な手段の一つとして冷凍が挙げられる。冷凍は、ほぼあらゆる食品に対して、タンパク変性等の不可逆変化を最小限に抑えながらシェルフライフを延長できるためである。だが一般に、冷凍はエネルギー多消費型の保存技術であり、持続的発展可能社会を目指す潮流にはそぐわないと考えられがちである。しかし実際には、食品ロスに伴う環境負荷が減少させられれば、冷凍保存のライフサイクルでの環境負荷は、他の保存法よりも小さくなる可能性がある。本研究では、ハンバーグを対象として、チルドと冷凍の2通りの流通形態のLCAを行い、両者の環境負荷の定量的な比較を試みる。

食品廃棄を考慮した凍結食品の環境影響評価

食品廃棄を考慮した凍結食品の環境影響評価

Soret帯吸収ピーク波長を用いたマグロ赤身肉の肉色評価方法

マグロなどの赤身肉は、その鮮やかな赤色が食欲や購買意欲に大きく関係している。この赤色は肉に含まれるミオグロビンという色素タンパク質の状態に左右される。ミオグロビンが酸素と結合している状態(オキシミオグロビン)が好ましい色合いであるが、それが酸化反応によってメトミオグロビンという状態になると褐色に変色してしまう。この変色の度合いを示す指標をメト化率といい、赤身肉の重要な品質指標として知られている。現在、メト化率は肉抽出液の吸光度から算出されるが、本研究では既往の方法とは異なるSoret帯と呼ばれる400nm付近の吸収帯のピーク位置を用いて評価する手法を開発した。本手法は従来法よりも、測定方法が簡便で、再現性に優れ、測定感度が高く、なおかつ少量のサンプルでも測定可能、など多くの利点を持つ。

Soret帯吸収ピーク波長を用いたマグロ赤身肉の肉色評価方法

Soret帯吸収ピーク波長を用いたマグロ赤身肉の肉色評価方法

Influence of Impurities in TiO2 Coatings on Electrode Potential of Photocatalytic Anode Assembling to Marine Microbial Fuel Cell

海洋微生物燃料電池組込用アノード電極に使用するTiO2半導体電極について、皮膜要素であるTiO2粉体の純度が電極特性に及ぼす影響を調べた。TiO2純度95.2%では、光照射後に電極表面に斑点状のしみが発生し、かつ光電位の低下効果について抑制作用が現れた。この「しみ」の部分を走査型電子顕微鏡ならびに、エネルギー分散型X線分析装置を使って調べたところ、不純物元素であるSiやZrの酸化物が検出された。また、表面電位プローブにより表面電位分布を測定したところ、この部分で局所的に電位が高い(電位低下の抑制作用が大きい)ことがわかった。以上の結果から、繰り返し光照射を行うTiO2電極においては、TiO2純度を高める必要があり、TiO2純度99.9%の場合は、上記の発生が起こらないことが確認された。これにより、安定的な発電素子として、本TiO2電極が使用可能となった。

Influence of Impurities in TiO2 Coatings on Electrode Potential of Photocatalytic Anode Assembling to Marine Microbial Fuel Cell

Influence of Impurities in TiO2 Coatings on Electrode Potential of Photocatalytic Anode Assembling to Marine Microbial Fuel Cell

酢酸洗浄合液に含まれるCd除去方法の検討

【目的】 本研究ではホタテガイ加工廃棄物を弱酸水溶液で洗浄する際に、生じた弱酸洗浄合液に含まれるCdをキレート繊維で除去する方法を検討した。
【方法】 (1)確立した条件でホタテガイ軟体廃棄物を2%酢酸水溶液で洗浄し、生じた洗浄合液を試料とした。(2)洗浄合液にキレート繊維を0.5~4%加え、2又は5時間攪拌し、Cdを取り除くためのキレート繊維添加量および処理時間を検討した。(3)使用済キレート繊維の再生にはまず20倍2MHClで処理し、続いて40倍水で3回処理し、再生済キレート繊維として使用した。
【結果】 (1)洗浄合液の窒素量は0.48%であったが、キレート繊維で処理したところ、ほとんど損失しなかった。(2)洗浄合液に含まれるCd濃度は1.77mg/kgであったが、0.5~4%キレート繊維で5時間処理した場合、Cdが93%以上除去され、Cd ppm/N1%が0.27ppm以下であった。2時間処理した場合、Cdが90%以上除去され、0.5%キレート繊維の場合を除き、Cd ppm/N1%が0.35ppm以下であった。(3)キレート繊維の使用回数を検討したところ、1%キレート繊維および2時間の処理条件で、約18回使用できることがわかった。今後高濃度Cdを含む最終廃液からCdの分離方法を合わせて、ホタテガイ加工廃棄物の全体の処理コストを抑える条件を更に追究する予定である。

 

酢酸洗浄合液に含まれるCd除去方法の検討

酢酸洗浄合液に含まれるCd除去方法の検討

 

メカジキ好漁場の選定に関する研究

マグロ・カジキ類の好漁場が広大な海洋の何処で形成されるかを正確に知る事が出来れば、漁業効率を向上させる事ができるだけでなく、資源量のより正確な推定を行う事が可能となる。海面水温情報で得られる水温に関する情報は、浮魚類が適水温の範囲で棲息する傾向をもつため、有力な漁場選定要素となる。また、比較的深い水深でも回遊を行うマグロ・カジキ類にとっては、表面の情報だけでなく、海洋内部の海水密度構造に強く影響を受けた海面の凹凸の情報(海面高度)も有益な情報といえる。加えて、海面高度情報は、海面の流れを与え得るため、大規模な流れ場の特徴と、漁場とを関係づけるのに用いることができる。

メカジキ好漁場の選定に関する研究

メカジキ好漁場の選定に関する研究

南極オキアミの食品開発への取り組み

栄養が豊富で資源量の多い南極オキアミを食品として利用する取り組みが、民間企業や国のプロジェクトとして約40年にわたって実施されてきました。
南極オキアミは、身が非常にやわらかく、食品加工が難しい等の問題点から、食品開発への道は険しいものでしたが、序々に南極オキアミを用いた食品も登場しつつあります。
日本水産は、南極オキアミ食品のパイオニアであるとともに、現在でも、その取り組みを積極的に続けています。ここでは、その取り組みの様子を少しご紹介します。

南極オキアミの食品開発への取り組み

南極オキアミの食品開発への取り組み

海藻凝集剤

コンブやワカメなどの褐藻類を原料として、固液分離(懸濁汚水の浄化)に用いる凝集剤を調製する工程、原理、凝集剤の性能について紹介します。
調製工程の特徴は、抽出(成分分離)を行わない点にあり、このため海藻凝集剤は原料海藻の成分をほぼそのまま含んでいます。したがって、製造工程は極めてシンプルであり、特殊な装置や試薬を必要としません。
また、海藻に含まれる成分のうち、凝集作用を持つものはアルギン酸ですが、市販の精製アルギン酸よりも高い凝集性能を示します。最も広範にしようされるPACと比較すると、凝集効果は同等で、かつ、事前のpH調製が不要、処理後のpHを変化させないという利点があります。

海藻凝集剤

海藻凝集剤

冷凍すり身を用いた非加熱ゲルの製造方法に関する研究

一般的な水産練り製品は,魚肉を塩擦り後,これを加熱してゲル化させる。本研究では,この加熱工程を経ず代わりに酢酸溶液に浸漬することで得られる非加熱ゲルについて研究した。

本研究の非加熱ゲルを得るためには,一定量以上の卵白の添加と坐り工程が必須であることを明らかにした。また,卵白の添加は,これに含まれるプロテアーゼが酢酸溶液浸漬中に生じる魚肉由来の酸性プロテアーゼの活性を阻害することが推察された。

冷凍すり身を用いた非加熱ゲルの製造方法に関する研究

冷凍すり身を用いた非加熱ゲルの製造方法に関する研究

貝につける名札 - アバロン・タグ® -

アバロン・タグ®はステンレス製の小さな貝類用の名札です。東京海洋大学の特許技術(特許第3962808)である貝類用金属製標識を元に製品化したものです。取付簡単で錆びにくく、放流種苗の資源管理やトレーサビリティに活用できます。アバロン・タグを取り付けると、産地や放流年を明確に知ることができ、資源管理に役立てることができます。また、産地が明らかになるので、産地偽装防止や養殖アワビのブランド表示などに活用できます。

販売を開始した平成16年度以来、平成23年の初夏には累計出荷個数が200万個に達しました。そのほとんどが全国各地で種苗放流されるアワビ稚貝に取り付けられました。アバロン・タグの刻印番号はデータベース化され、番号の重複と偽造を防止し、産地等の問い合わせに迅速に回答することができます。

アバロン・タグの普及活動はNPO法人海事・水産振興会が担当していましたが、平成28年度より、アバロン・タグの製造・販売は(株)イー・ピー・アイに一元化されました。

貝につける名札-アバロン・タグ-

魚類養殖が世界を救う!!

廃棄穀類糠には生活習慣病予防効果があることを明らかにしている.現在の魚類養殖では,高エネルギー飼料が大量に使用され,水圏環境に大きな負荷を与えるとともに,大量の食資源を浪費している.本技術によって,オリザノールを含む飼料やオリザノールに富む米糠を配合した飼料を魚類に投与すると

  • 養殖魚のエネルギー代謝を改善し,体重増加を早め,飼料効率の改善にも効果的
  • 魚肉の変色を防止することが可能.食品廃棄物量の軽減できる
  • 健康機能性のあるオリザノールが魚肉に蓄積した養殖魚を提供できる

これらのことから,穀類糠やオリザノールの添加によって養殖魚の品質および付加価値向上が可能となるだけでなく,その養殖魚を用いた生活習慣病予防が可能となる.また,本技術はすでにマグロにおいても適用できることを確認済みである,マグロは原油価格高騰・漁船燃料高騰・海外の漁獲規制などによって供給量減少を余儀なくされている中,海外諸国での需要による「買い負け」も含め,我が国が安定的にマグロを確保することが困難な状況にある.その中で,本技術は効率的なマグロの養殖方法を提供でき,養殖クロマグロの「早期出荷」「安定安価供給」「安心安全」および「生活習慣病予防・改善」を確立できる.

魚類養殖が世界を救う!!

魚類養殖が世界を救う!!

環境負荷低減および防災対応型シーフードのロングライフ化

震災発生以降,食品の貯蔵・品質保持技術への関心が高まっている.当研究室では災害時の備蓄という概念に加え,食品製造時における地球環境への負荷の抑制及び食に対する新たな付加価値の提供を目指して,脱水シートおよび通電加熱を用いたシーフードのロングライフ化技術を提案する.脱水シートは,塩蔵や乾燥など,従来の手法とは異なった水分コントロールによる食品の貯蔵技術であり,生鮮食品の品質の変性を抑えることが可能である.また通電加熱は,レトルトをはじめとした従来の加熱殺菌技術と比較して,環境への負荷が少なく,従来の手法に匹敵する品質の製品が製造可能である.このような,一貫した食品の貯蔵性向上をテーマとした研究は,今後の食糧事情に大きく貢献するものであるといえる.

ポスタータイトル 環境負荷低減および防災対応型シーフードのロングライフ化

ポスタータイトル 環境負荷低減および防災対応型シーフードのロングライフ化

里海乳酸菌・里海酵母

わが国の長い海岸線には多種多様な景観が存在している。環境省は里海とは「人手が加わることにより生物生産性と生物多様性が高くなった沿岸海域」と提唱している。そこは、人と自然の領域の中間点にあるエリアであり、里山と同じく人と自然が共生する場所であり、伝統的な漁業、社会組織、食文化が生まれ、伝承されてきた場所である。環境中に生息している微生物は、基本物資の循環に大きく貢献しており、その一部は土壌環境や水産物、発酵食品、残渣・廃液処理等を介して、人々の暮らしと係わっている。近年、有用な微生物の探索のために、海外の発酵食品や極限環境中からの微生物探索が注目されているが、われわれは身近な沿岸域=里海環境から分離される乳酸菌および酵母のうち人間にとって有用な機能を持つものを里海乳酸菌・里海酵母と位置づけ、基礎から応用までの研究をつづけたいと考えている。今回はこれまでの研究成果の一部を紹介する。

里海乳酸菌・里海酵母

里海乳酸菌・里海酵母

水圏動物皮から抽出された糖ペプチドの抗アレルギー活性

糖鎖は核酸およびタンパク質に次ぐ「第三の生命鎖」として近年医療への応用が期待されている。しかしながら,糖鎖構造の複雑さなどの理由から糖鎖に関する研究は遅れている。また,従来の糖鎖研究は陸上動物に焦点を当てたものがほとんどであり,水圏動物の糖鎖の機能性を調べた研究例は極わずかである.そこで,本研究では水圏動物の糖鎖を対象とし,その機能性の解明を行うこととした.ゼロエミッションの観点から試料には大部分が廃棄されている皮を用いることとし,皮由来糖鎖のヒアルロニダーゼ阻害活性および肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制作用を調べたところ,皮由来糖ペプチドに抗アレルギー作用があることが明らかとなり,新たな抗アレルギー薬としての応用の可能性が期待されるところである.

水圏動物皮から抽出された糖ペプチドの抗アレルギー活性

水圏動物皮から抽出された糖ペプチドの抗アレルギー活性

食用キノコ水溶性成分が食品の黒変を防止する!~安全、安心な黒変防止技術~

食用キノコより抽出した水溶性成分による、食品の褐変、黒変防止技術についての研究です。
流通・販売の過程で問題となる、エビ・カニなどの甲殻類、および養殖ブリなどの褐変、黒変を防ぐことを目的としました。
養殖ブリに対しては、キノコ栽培に用いられた廃棄菌床の抽出液を飼料に添加することで、エビ・カニについては、キノコ食用部の抽出液を混ぜた海水で、活け締め前の30分間泳がせることで、その効果を確認しました。なお、強いポリフェノールオキシダーゼ活性阻害を端的に示す、すりおろしりんごの褐変を防ぐ様子についてもポスターに掲載しました。

食用キノコ水溶性成分が食品の黒変を防止する! ~安全、安心な黒変防止技術~

食用キノコ水溶性成分が食品の黒変を防止する! ~安全、安心な黒変防止技術~

日本沿岸に生息するヒトデ類の有効利用に関する研究

日本沿岸には300種類を超える様々なヒトデ類が生息しているが,それらの大部分は埋め立てや焼却処分によって廃棄されている.これらのヒトデ類を有効利用するために,我々の研究グループはヒトデ類が有する生理活性成分の一種であるステロイドサポニンに着目し,その機能解明を行なっている.今回,日本沿岸に広く生息しているキヒトデおよびクモヒトデからサポニンをそれぞれ抽出し,抗菌活性およびストレス緩和作用を調べたところ,カビなどの真菌に対する抗菌活性は両者のヒトデで異なること,マウスに対する抗ストレス作用は両ヒトデでともに確認されることを明らかにした.このようなヒトデの機能をさらに詳細に解明することによって,近い将来ヒトデの新規有効利用法を確立し,ヒトデの廃棄問題に一石を投じたいと考えている.

日本沿岸に生息するヒトデ類の有効利用に関する研究

日本沿岸に生息するヒトデ類の有効利用に関する研究

船舶への風力発電機導入に伴うエネルギー収支

風力発電機を船舶に設置すると,発電と同時に抗力を受ける。この抗力は,船体の推進抵抗を増加させ,推進機関である主機出力を増加させる。風力発電機による発電電力と主機出力増加分を考察し,エネルギー収支から風力発電機の運転条件を検討した。
推進効率0.55,相対風速4,8,12 m/s,船速0から12ktまでのエネルギー収支を検討した結果,風力発電機を停止させる必要のある船速と相対風速の条件として,船速4m/sで停止相対風向は15~30°,12m/sで70~75°が得られた。

船舶への風力発電機導入に伴うエネルギー収支

船舶への風力発電機導入に伴うエネルギー収支

生物協調型水中ロボットBA-1

BA-1はH19〜H21に購入した備品等を組み合わせることで構築されました。
水深1,000mまで潜ることができ、全自動で水中を観測することができる自律型の水中ロボットです。
生物協調型としての特徴は、水中の魚に刺激を与えて、その反応をモニタする機能を備えていることです。
高度な水中環境モニタリングや海底の観測が可能です。

生物協調型水中ロボットBA-1

生物協調型水中ロボットBA-1

搭載装置
<魚や環境をモニタするもの>
・ハイビジョンカメラ
・高解像度デジタルカメラ
・音響カメラ
・溶存酸素計
・サイドスキャンソーナー

<航法装置等>
・慣性航法装置
・USBL水中音響測位システム
・水中通信ネットワークシステム
・GPS
・ドップラ式速度計
・ペンシルビームプロファイラ

<魚に刺激を与えるもの>
・水中自発給餌システム
・カラーマトリクスLED照明
・水中スピーカ

水圏バイオマスを原料とするバイオエタノールの生産~有害外来草ホテイアオイの有効利用~

食糧との競合がない水圏植物であり、世界三大害草の一つであるホテイアオイ(Eichhornia crassipes)を原料として、高効率なエタノール生産工程の検討を行った。糖化条件について酵素添加量は400Uが最適であった。生じたエタノール量はホテイアオイ1g当り0.21gであった。ホテイアオイ糖化液の構成糖は、グルコース72%、キシロース16%、ラムノース7%、ガラクトース4%、マンノース1%であった。これらの構成糖のうちグルコース・ガラクトース・マンノースについては、天然酵母や菌株保存機関由来酵母の全株に発酵能があり、キシロースについてはPichia stipitis NBRC 1687のみ発酵能があった。ラムノースについてはどの株も発酵能を示さなかった。

水圏バイオマスを原料とするバイオエタノールの生産~有害外来草ホテイアオイの有効利用~

水圏バイオマスを原料とするバイオエタノールの生産~有害外来草ホテイアオイの有効利用~

伊豆赤沢海洋深層水からの有用酵母の探索

2005年(H17)より「海洋生物を用いた健康産業へ応用」というテーマで東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科応用微生物講座の今田教授と共同研究を行っている。現在は水深800m(日本最深)から取水される伊豆赤沢深層水中の微生物について研究中である。
今回は産業分野に対する有用微生物の研究にあたり、海洋深層水の一次ろ過装置内にセットしているバッグフィルターを探索源としてヒトの生活に長いつながりを有する酵母の探索と分離を行い、分離株については種の同定を行った。さらに分離された全ての株の培養上清に対して、ヒトの美容・健康分野を想定した機能性評価を試みた。その結果これまで分離した酵母85株のうち7株に美白作用が、また別の9株に抗酸化作用が確認された。
一般に海洋深層水中には微生物が少ないと考えられているが、これまでの我々の研究では生物量としては確かに少ないものの、生物種としてはむしろ表層よりもバラエティーに富んでおり、さらに表層とは異なるユニークな微生物が存在も期待される。
今後さらにこれら海洋深層水中の微生物の中から、産業利用上の有望株について研究を継続して行う予定である。

伊豆赤沢海洋深層水からの有用酵母の探索

伊豆赤沢海洋深層水からの有用酵母の探索

海洋微生物燃料電池の出力に関与するバイオフィルム中微生物の遺伝子解析

本研究では,海水中でバイオフィルムを付着させることにより,光触媒効果で電圧を得る微生物電池に関して,電池の出力改善のためカソード電極に付着するバイオフィルムの微生物相を調べ,電位上昇に寄与する微生物の同定を試みた。
実海水中に浸漬したステンレス鋼電極において,DLC皮膜は浸漬初期の電位上昇を高めるが,到達電位には影響しなかった。また,研磨状態やDLC皮膜の有無によるバイオフィルムの微生物相に違いは見られなかった。
さらに,バイオフィルムと海水中の微生物の群集組成を調べた結果,時季による相変化は両者で異なること,海水中の特定の微生物が電池形成に関与することが 明らかとなった。電池形成に関与する微生物として,Comamonadaceae科および Rhodobacteraceae科の真正細菌が同定された。

海洋微生物燃料電池の出力に関与するバイオフィルム中微生物の遺伝子解析

海洋微生物燃料電池の出力に関与するバイオフィルム中微生物の遺伝子解析

漁船転覆防止システム

本研究は、「三次元重心検知理論(特許4517107)」の応用展開として、転覆の危険性が高い漁船を対象としたリアルタイムでの三次元重心位置およびGM(メタセンタ高さ)検知による漁船転覆防止システムの開発を目的としている。

漁船の転覆事故は、プレジャーボートを除く全転覆事故件数の約70%を占めている。船舶では、重心位置やGMに注意して操業すれば転覆防止効果がある。船舶の重心位置やGMは出航前の復原力試験等で推定できるが、漁船は操業の進捗により逐一重心位置もGMも変化するので、同試験の情報は実際には無意味となる。

そこで、操業中でもリアルタイムで三次元重心位置およびGM(メタセンタ高さ)を検知できるシステムを漁船に装着し、その検知結果が漁業者に随時告知されるようになれば、漁業者は転覆しないように安全に操船できるので、漁船の転覆事故を未然に防止できるようになる。

本研究は、平成23年度日本水産学会春季大会(3/27-31、於東京海洋大学品川キャンパス)にて口頭発表する。また、同学会会期中、品川キャンパス繋船場にて漁船転覆防止システムの公開試用会を開催する。

漁船転覆防止システム

漁船転覆防止システム

超電導モータ内蔵ポッド推進システム

本研究では,大幅な省エネルギー化を目指して,高温超電導モータによるポッド推進システムの開発を行った。ポッドに内蔵される高温超電導モータのスリム化と,最適化された船型改良やスリム化されたポッドとプロペラ形状の最適化により、従来の推進システムと比較して約16%の推進効率の向上が見込まれた。

省エネルギー効果の試算として、内航船だけへの適用によって、石油換算で2020年に約2.5万kL/年、2030年には約10.2万kL/年の省エネルギー効果を期待できる。

超電導モータ内蔵ポッド推進システム

超電導モータ内蔵ポッド推進システム

バイオセンサの海洋水産分野への応用

近年,食の安全という観点から魚の供給源となる養殖分野においても,健全な魚の生産が推進されています.すなわち,安心・安全な魚を市場に送り出すという観点から,養殖魚の健康診断法の確立が最近になって注目されています.私達の研究室では,数年前より魚類の迅速簡便な健康診断を実現するために,魚類の血糖値等の血液成分をはじめ,魚病,産卵予測のモニタリングが可能なバイオセンサの開発研究に取り組んできました.ここでは,これら項目を迅速簡便に測定できる新しいバイオセンサ技術について紹介します.

バイオセンサの海洋水産分野への応用

バイオセンサの海洋水産分野への応用

海洋微生物を用いた生鮮素材の褐変防止効果

海洋環境から分離した糸状菌Trichoderma sp. H1-7 株が、その培養上清中にチロシナーゼインヒビターを生産することが、これまでの研究から分かっている。今回の報告においては、本培養上清を用いて、様々な生鮮素材を浸漬処理することで、酵素的褐変を防止し、色調を保つ効果を確認した。そのため、本培養上清は、生鮮素材が有する付加価値の維持に有効と思われた。

海洋微生物を用いた生鮮素材の褐変防止効果

海洋微生物を用いた生鮮素材の褐変防止効果

LED漁灯で省エネ

イカ釣り漁業,サンマ棒受網漁業では灯光を利用して操業が行われる。これまで,漁獲量の増大を目標に,「集魚灯」の大光量化が進んできたが,近年の燃油料の高騰や光量規制に伴って,省エネ化の動きが進んでいる。
本研究では,サンマ棒受網漁船において,従来の白熱灯・メタルハライド灯からエネルギー消費の少ないLED灯に変更して,燃油消費量の低減と操業の効率化を確認した。

LED漁灯で省エネ

LED漁灯で省エネ

イカ釣り漁業,サンマ棒受網漁業では灯光を利用して操業が行われる。これまで,漁獲量の増大を目標に,「集魚灯」の大光量化が進んできたが,近年の燃油料の高騰や光量規制に伴って,省エネ化の動きが進んでいる。

本研究では,サンマ棒受網漁船において,従来の白熱灯・メタルハライド灯からエネルギー消費の少ないLED灯に変更して,燃油消費量の低減と操業の効率化を確認した。

 

光ファイバーを利用したニードル型バイオセンサの開発

光ファイバーを利用したニードル型バイオセンサの開発

光ファイバーを利用したニードル型バイオセンサの開発

食品・医療分析,環境計測等の分野において,目的物質を迅速,簡単に試料を直接かつ非破壊的に測定できるシステムの開発が望まれている.そこで本研究室では,以下に示すような新しいバイオセンサの開発を試みた。

海から食卓まで~安全安心な生鮮魚類の供給管理技術の開発

漁場の水質浄化・水域管理を目指し,海洋環境から単離した微生物を用いた海洋および沿岸域のバイオレメデイエーション技術を提案する.これまでに,PCBやダイオキシン等の有害かつ難分解性の有機化合物を分解する微生物を用いた環境修復方法については様々なものが既に報告されている.しかし,海洋のような塩分を含む環境下では対象となる有機化合物を分解する能力が無いか,その能力に乏しい場合が多い.これに対し,本研究で開発された耐塩性を有するSN-3 菌を用いたバイオレメデイエーションは塩存在下での環境有害物質の分解・無害化を可能にする.魚の品質は生息する環境,特に水質に大きく影響されるが,本研究で提案する方法により,魚の棲息水域を浄化することが期待される.そして,清浄化された水域で漁獲された魚を鮮度とおいしさを保ったまま消費者の食卓まで届けるためには,適切な流通管理システムが必要である.私達はこのようなニーズにも応えるために,温度履歴と鮮度を可視化するツール(バイオサーモメーターと呼称,BTMと略称)を開発した. BTMは,臭いや見た目など人の五感に頼った従来の曖昧な指標ではなく,積算温度と鮮度指標K値といった科学的指標に基づいた鮮魚管理を可能とする.上記2つの技術を利用することにより,海から食卓まで,トータルな食環境を管理し,より安全安心な魚を供給するシステムが構築できると思われる.

海から食卓まで~安全安心な生鮮魚類の供給管理技術の開発

海から食卓まで~安全安心な生鮮魚類の供給管理技術の開発

水産有用甲殻類の難飼育性種苗生産技術の開発

難飼育性といわれている甲殻類のうち、成長の早いオオバウチワエビに関する種苗の大量生産技術と、事業として採算の取れる養殖技術を研究開発しています。

(生物系特定産業技術研究支援センター「イノベーション創出基礎的研究推進事業」に採択されました(平成21、22年度))

水産有用甲殻類の難飼育性種苗生産技術の開発

水産有用甲殻類の難飼育性種苗生産技術の開発

動揺マニピュレータのグローバル座標における運動制御

船舶や海洋プラットホームのように動揺する環境に装備された機械システムの制御に関する研究です.船舶のように動揺している環境に装備された機械システムの場合,その運動を船舶上で観察した場合と,陸上から観察した場合では異なったものとなります.例えば,船舶に装備された魚群探知機の方向を船舶に対して一定に保っても,船舶が動揺するために海底に対しては常に方向が変わってしまいます.「グローバル座標」とは,このように動揺する座標系に対して,外の動揺しない座標系を意味しています.動揺する座標系に機械システムが設置されていても,外の動揺しない座標系から見て所望の運動を行うように制御することが目的です.この研究の具体的な応用例としては,すでに触れたような海底に対して常に一定の方向を維持するような魚群探知機,船舶の動揺に影響を受けずにCTDなどによる海洋観測を行うためのヒーブ補償付ウィンチ等,海洋計測技術の高精度化に関連するもの,また,船舶と陸間で荷役作業を行うような作業機械のように,海上作業の安全性,効率性に関連するものが考えられます.

動揺マニピュレータのグローバル座標における運動制御

動揺マニピュレータのグローバル座標における運動制御

GPSと魚群探知機を用いた沿岸域詳細海底地形計測に関する研究

海洋生物の生態・行動や漁業における漁獲の成否は,海底地形と密接な関係があるとされる。海底地形図に必要な水深データは,一般的にマルチナロービーム超音波測深器を用いて計測される。しかし,こうした測器を搭載した調査船は少ない上に,調査船自体もサンゴ礁など岩礁性の沿岸域では調査が困難である。一方,船舶航行にとってあまり重要でない浅海域の水深データは乏しく,詳細な海底地形を把握する事ができない。そこで本研究では,安価なDifferential GPS(DGPS)と魚群探知機を喫水の浅い小型の和船等に装着して,位置と水深計測値をパソコンに取り込む比較的簡便なシステムを構築し,3次元海底地形図の作成を試みた。その結果,海上保安庁が発行している海底地形図と同等レベルの海底地形図を作成することが可能なことを示した。

GPSと魚群探知機を用いた沿岸域詳細海底地形計測に関する研究

GPSと魚群探知機を用いた沿岸域詳細海底地形計測に関する研究

ICタグと通信衛星を用いたマグロ漁獲情報管理の実証実験

近年発達したICタグは、書き換えのできない固有のIDを持ちながら多くの情報を記録できるため、ブランド品や検査用商品を扱う業界では、これを証明書代わりに商品に内蔵する事で不正を排除できると期待されている。本研究では、特にマグロ延縄漁業を対象として、電子荷札と言われる“ICタグ”とGPSを組み合わせ、さらに、ICタグに書き込んだデータを低軌道通信衛星(ORBCOMM)を利用してほぼリアルタイムに情報管理基地(日本)に送信することによって、マグロ1尾ずつの漁獲情報を管理するシステムを構築する。獲れた場所(緯度経度)と漁獲日時を漁船名など管理に必要な情報とともに自動的に取得して、記録したICタグをマグロ魚体に固着する。さらに、消費者への生産履歴を開示できるよう、解体・分化されたマグロに対しても、バーコードや2次元バーコード(QRコード)を発行することによりことにより、漁獲現場からのマグロの商品履歴、操業管理のIT化を図った。

ICタグと通信衛星を用いたマグロ漁獲情報管理の実証実験

ICタグと通信衛星を用いたマグロ漁獲情報管理の実証実験

加熱調理の最適制御

本研究室では,調理・加工・貯蔵における熱的操作を制御し,安全かつ高品質な食品を生産することを目指している.その手法は,伝熱解析をベースに,デンプン系食品から魚肉蓄肉に至るまで,対象食品の熱操作による変化の記述までを視野に入れた研究を展開している.今回のポスターでは、特にA.魚の焼成調理における焼き色のシミュレーション、および、B.肉の低温調理におけるタンパク質変性分布のシミュレーションについて紹介する。過度な加熱は、ヒトとって危害となる成分を生成することは知られており、本研究が示す加熱調理過程における伝熱および反応のシミュレーションによって、過不足ない加熱調理法を提供できるようになる。

調理・加工工程における熱媒体の挙動,素材の伝熱・物質移動・反応を予測するためのモデルが提供されることで,高品質な調理ができる加熱機器の設計や制御に役立ち,また必要十分な加熱処理を行うことで調理・加工における省エネルギー化も可能になる.

加熱調理の最適制御

加熱調理の最適制御

伊豆赤沢海洋深層水からの有用微生物の探索

わが国における海洋深層水取水事業開始から20年目を迎え、海洋深層水利用活用のさらなる活性化に向けて新しい研究の展開が待望されている。一般に海洋深層水は微生物数が少ないことから、これまで微生物分野に関する研究への感心は極めて低かった。一昨年、㈱DHCが伊豆赤沢にわが国最深の取水施設を設立したことから、同社と海洋深層水中の微生物を主眼にとらえた共同研究を行っている。今回は深層水中の微生物群集組成を解析するとともに産業利用上有用な乳酸菌を分離したのでその性状について述べたい。

伊豆赤沢海洋深層水からの有用微生物の探索

伊豆赤沢海洋深層水からの有用微生物の探索

エビアレルゲンのステンレス表面への吸着特性

近年,食物アレルギー患者の増加に伴い,アレルギー食品不使用食品,アレルゲン除去食品の製造・販売が行われるようになっている。こうした食品の製造は多品種, 少量生産であるため,製造設備の一部を通常の食品と共有することが多いのが実状である。その場合,アレルゲンの意図しない混入が生じることのないよう,使用機器を十分に洗浄しておく必要があり,洗浄条件を合理的に設定するためには,機器表面に対するアレルゲン付着挙動を把握しておくことが重要である。しかしながら,水産物のアレルゲンについては研究例が非常に少ない。本研究では, 成人アレルギー原因食品の第1位であるエビに着目し, その主要アレルゲンのトロポミオシン(Tm)について,実際の食品に近い形態でのステンレス表面に対する付着挙動を調べた。

〔実験方法〕

ホッコクアカエビPandalus eousの身を蒸留水中または塩を含む緩衝液中(20mM HEPES,pH7.0)ですりつぶして得た抽出液1ml(タンパク質濃度1.5mg/ml)をステンレス粉末2g(比表面積0.57~0.58m2/g)と一緒にバイアル瓶に入れて密封し,25℃の恒温槽内で振盪した。2時間後,上澄み液中のTm濃度をELISA法で測定した。そして,初期濃度との差から,ステンレス表面への付着量を求めた。あわせて,BCA法でタンパク質のステンレス付着総量も測定した。

〔結果〕

蒸留水で抽出した場合,Tmの付着率が82.6%であるのに対して,タンパク質は43.9%に留まり,Tmは表面に比較的付着しやすいことが示唆された。また,付着したTmおよびタンパク質は,水洗浄で脱離しなかった。緩衝液で抽出したものは、抽出時の塩濃度を3%以上にすると,Tmとタンパク質の付着率はどちらも約60%程度となり,Tmの付着しやすさは失われた。

〔考察〕

吸着したタンパク質およびトロポミオシンは、水洗浄で脱離しないほど強固に付着しており,洗剤を用いる,たわしで擦る等の適切な洗浄方法を行わなければ,ステンレス表面に残存してしまう可能性が大であることが確認された。また,蒸留水で抽出した場合に見られるように,条件によっては,アレルギー原因物質であるTmが,ステンレス表面に選択的に付着残存する場合があることが明らかとなった。

以上,得られた知見はエビのアレルゲンを合理的に洗浄するための条件設定の一助になるものと考えられる。

エビアレルゲンのステンレス表面への吸着特性

エビアレルゲンのステンレス表面への吸着特性

超電導船の船舶推進動力応用とその周辺技術

超電導磁石を応用したMWクラスの船舶や漁船の電気推進用のモータを目指した研究を行っている。

その基盤となる超電導磁石と関連材料技術、ならびに超電導モータとその周辺技術を紹介する。

環境にやさしく、人に優しい  電気推進船の性能を もっともっと 向上させるために

環境にやさしく、人に優しい  電気推進船の性能を もっともっと 向上させるために

NMRによるイヌリンのクリーム化機構の解明

漁場の水質浄化・水域管理を目指し,海洋環境から単離した微生物を用いた海洋および沿岸域のバイオレメデイエーション技術を提案する.これまでに,PCBやダイオキシン等の有害かつ難分解性の有機化合物を分解する微生物を用いた環境修復方法については様々なものが既に報告されている.しかし,海洋のような塩分を含む環境下では対象となる有機化合物を分解する能力が無いか,その能力に乏しい場合が多い.これに対し,本研究で開発された耐塩性を有するSN-3 菌を用いたバイオレメデイエーションは塩存在下での環境有害物質の分解・無害化を可能にする.魚の品質は生息する環境,特に水質に大きく影響されるが,本研究で提案する方法により,魚の棲息水域を浄化することが期待される.そして,清浄化された水域で漁獲された魚を鮮度とおいしさを保ったまま消費者の食卓まで届けるためには,適切な流通管理システムが必要である.私達はこのようなニーズにも応えるために,温度履歴と鮮度を可視化するツール(バイオサーモメーターと呼称,BTMと略称)を開発した. BTMは,臭いや見た目など人の五感に頼った従来の曖昧な指標ではなく,積算温度と鮮度指標K値といった科学的指標に基づいた鮮魚管理を可能とする.上記2つの技術を利用することにより,海から食卓まで,トータルな食環境を管理し,より安全安心な魚を供給するシステムが構築できると思われる.

NMRによるイヌリンのクリーム化機構の解明

NMRによるイヌリンのクリーム化機構の解明

利用効率性を考慮した電気軽貨物自動車の設計試案

地球環境問題対策として,電気自動車(EV)の普及が望まれているが,バッテリー容量や,車両価格の面で未だに既存燃料車に対抗できない段階にある.しかし,首都圏を走行する宅配事業における軽自動車など,1日の走行距離が短距離である用途に限れば,現在のEV技術でも十分可能なマーケットがある.さらに,近年の技術開発により,コンパクトになったバッテリーを使えば,EVの特徴を生かした車両設計も可能である.

利用効率性を考慮した電気軽貨物自動車の設計試案

利用効率性を考慮した電気軽貨物自動車の設計試案

サバにマグロを産ませる:代理親魚技術の開発

海のダイヤ“マグロ”は、獲りすぎによる絶滅が心配されています。魚を育てる技術では世界トップの日本でも、体重100キロを超すマグロに卵を産ませ、それらを稚魚へと育てて海へと放流する技術はまだ完成していません。私たちは、マグロの親戚“サバ”に、マグロの卵を産ませる世界初の研究に挑戦しています。

サバにマグロを産ませる:代理親魚技術の開発

サバにマグロを産ませる:代理親魚技術の開発

情報が食品の価値に及ぼす影響の定量化

食品生産業も経済活動である以上、適正な利益を出せなければ、持続的な生産を行うことは不可能である。利益を上げるためには、製品が高価格で多く売れることが理想的であり、そのためには、製品の付加価値を向上させることが有効である。しかし製品の付加価値を向上させるためには、生産コストの増大を伴うことが一般的であるため、コスト増大と得られる付加価値との費用対効果を見極める必要がある。しかし、付加価値を定量的に評価することが困難であるため、コストの増大を認めるか否かの判断は、経験と勘とに頼るしかないのが現状である。

本研究室ではこれまでに、環境経済学の分野で使用されるCVM(Contingent Valuation Method:仮想評価法)を用いて、食品の価値を定量化する研究を進めている。これまでの結果から、価値と品質とは必ずしも対応せず、製品に関する情報によっても強く影響を受けていると考えるに至った。本ポスターは、これを実証するために、米を対象としたアンケート調査を実行し、情報が価値に及ぼす影響の定量化を試みた結果である。この結果、「遺伝子組み替え」、「無農薬」、「20XX年産」などの情報による付加価値(マイナスの場合も含む)が金額で表されることが確かめられた。金額の値はアンケートの手法や対象によって変り得るが、このような手法の実用可能性を示したことが本発表の成果であると考える。

情報が食品の価値に及ぼす影響の定量化

情報が食品の価値に及ぼす影響の定量化

摩擦を利用した表面改質技術

固体表面に、基材とは異なる機能を付与するために、様々な表面処理方法によりコーティングや表面改質が行われている。私共の研究室では、耐摩耗性の向上を目的として、特定の粉末を摩擦を利用して固体表面に溶着/埋入する技術開発を行っている。これまでに、平面及び丸軸表面に、基材としてステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン合金、SCM鋼などを取り上げて、金属粉末(Si粉末、Cu粉末など)セラミック粉末(TiN粉末、SiC粉末など)を薄く均一に溶着/埋入させることに成功している。本ポスターでは、丸軸表面への処理方法を中心に提示するとともに、創生されたサンプルの展示、その特徴と耐摩耗性を調べた結果などを述べる。

摩擦を利用した表面改質技術

摩擦を利用した表面改質技術

Anti-inflammatory activity of Dictyopteris undulata on Acute Inflammation in animal models(シワヤハズの抗炎症作用)

海藻シワヤハズの粗抽出物が抗炎症作用を有する可能性を動物実験で見いだした。八丈島沿岸で採集したシワヤハズのメタノール抽出物を予め経口摂取することで、マウスの足に実験的に引き起こした浮腫(腫れ)の形成を有意に抑制した。浮腫は白血球を介する炎症反応によって形成されることから、局所的な過剰炎症のモデルとして抗炎症作用の評価に用いられている。さらに培養細胞を用いた実験により、炎症時に白血球から放出される炎症性マーカーである一酸化窒素(Nitric Oxide: NO)や組織壊死因子(TNFα)などの産生を抑制することが示されたことから、これら因子の放出を抑制することで、シワヤハズ抽出物が生体においても抗炎症作用を有することを示した。これら作用を指標に活性成分を単離したところ、既知物質ゾナロールおよびその類縁体が活性本体であることが明らかとなった。このゾナロールについてはin vitroでの抗菌作用とNO産生抑制作用が報告されているが、これら物質およびシワヤハズの抽出物がin vivoにおいて抗炎症作用を有することを示した報告は無く、興味深い研究成果であると考えている。

Anti-inflammatory activity of Dictyopteris undulata on Acute Inflammation in animal models(シワヤハズの抗炎症作用)

Anti-inflammatory activity of Dictyopteris undulata on Acute Inflammation in animal models(シワヤハズの抗炎症作用)

イカ由来リン脂質からのリゾホスファチジルセリンの調製

ホスファチジルセリン(PS)とドコサヘキサエン酸(DHA)は、脳において生理機能を発揮する物質として注目されている。このうちPSは、大豆のホスファチジルコリン(PC)から工業的に生産されたものが主に機能性食品素材として利用されている。さらに近年では、PSなどの分子内に二つの脂肪酸を有するリン脂質から脂肪酸を一つ外したリゾリン脂質の優れた機能性が期待されている。本研究では、リゾリン脂質のなかでもDHA結合型リゾホスファチジルセリン(DHA−LPS)を、ホスホリパーゼA1(PLA1)とホスホリパーゼD(PLD)を用いて調製する方法を検討した。DHA−LPSの調製方法は、PLA1とPLDの反応順序により2とおりが考えられる。そこで、2つの反応系路におけるDHA−LPS生成量の比較を行なった。酵素反応を組み合わせることでPCからLPSを産生する方法について、実際の調整条件の検討を行った研究はこれまでに無い。これら検討により工業レベルでのLPS(リゾホスファチジルセリン)の効率的製造が達成されれば、新しい機能性素材の安定供給の可能性を高めることから、興味深い研究成果であると考えている。

イカ由来リン脂質からのリゾホスファチジルセリンの調製

イカ由来リン脂質からのリゾホスファチジルセリンの調製

ヒジキの骨粗鬆症予防作用

海藻ヒジキの粗抽出物が骨粗鬆症を予防する可能性を動物実験で見いだした。乾燥ヒジキのメタノール抽出物を1ヶ月間摂取することで、骨粗鬆症モデルマウスで引き起こされる骨量減少が抑制された。さらに培養細胞を用いた実験により、骨組織を溶かす破骨細胞の分化を抑制することと、骨組織を形成する骨芽細胞の働きを活発化することが示されたことから、ヒジキ抽出物は骨吸収と骨形成の両方に作用することで骨代謝のバランスを保ち、骨組織の減少を抑制している可能性が示された。市販の食用乾燥ヒジキから得られることから機能性食品としても応用可能であると考えている。このヒジキ抽出物中の活性成分については解析中であるが、メタノール抽出物でも充分な活性を示すことからカルシウム等のミネラルではなく、ほかの成分が関与していると推定される。ヒジキの骨粗鬆症予防作用についての実験データはこれまでに無く、興味深い研究成果であると考えている。

ヒジキの骨粗鬆症予防作用

ヒジキの骨粗鬆症予防作用

打ち上げ海藻の有効利用 -熱水抽出物のミネラル、多糖類、抗酸化活性-

能登半島沿岸では様々な海藻が繁茂し、とくにホンダワラ類は良質な藻場を形成する上で重要である。その一部は流れ藻となっても、小型動物に生育環境を提供しながら、浜に打ち上げられる。冬から夏に打ち上げられるツルアラメ、クロメ、アカモク等の褐藻類は食用として採取されるが、食用以外の海藻や食用に適さない季節の海藻(図1)は、一部が肥料として用いられるものの、大半はゴミとして地元住民によって処分されている。本研究では、そのほとんどが有効利用されていない秋季の打ち上げ海藻について、有効活用の可能性を検討するために、熱水抽出液中のイオン(ミネラル)、水溶性多糖類含量や抗酸化特性等について検討した。

打ち上げ海藻の有効利用 -熱水抽出物のミネラル、多糖類、抗酸化活性-

打ち上げ海藻の有効利用 -熱水抽出物のミネラル、多糖類、抗酸化活性-