鮮度・衛生管理関連」カテゴリーアーカイブ

カツオの品質保持に及ぼす脱水シートの影響

脱水シートは2枚の食品用半透膜フィルムの間に,高濃度の食用糖類と食用糊料をはさんだ構造になっており,浸透圧を利用して食品から水分を取り除くことができるシートである.これまでに,脱水シートそのものの詳細な性質評価に加え,魚介類を包装した際の脂質酸化防止や調理性向上効果についての報告がなされてきた.当研究室においても鮮魚の品質保持効果に関して,サバ類,イワシ類,タラ類,ブリ及びサンマについて,VBN抑制効果とK値の上昇抑制効果があることを精査してきた(濱田ら2002,2003).本研究ではカツオを対象として,多角的角度から品質保持に及ぼす脱水シートの影響について検討を行うことを目的とした.

 

カツオの品質保持に及ぼす脱水シートの影響

カツオの品質保持に及ぼす脱水シートの影響

食品廃棄を考慮した凍結食品の環境影響評価

現在、日本の食品ロスは年間約500万~900万トンと推計され、これは食用向け農林水産物の約5~10%、食品由来の廃棄物の約30~50%を占めると言われている。この問題を解決する有力な手段の一つとして冷凍が挙げられる。冷凍は、ほぼあらゆる食品に対して、タンパク変性等の不可逆変化を最小限に抑えながらシェルフライフを延長できるためである。だが一般に、冷凍はエネルギー多消費型の保存技術であり、持続的発展可能社会を目指す潮流にはそぐわないと考えられがちである。しかし実際には、食品ロスに伴う環境負荷が減少させられれば、冷凍保存のライフサイクルでの環境負荷は、他の保存法よりも小さくなる可能性がある。本研究では、ハンバーグを対象として、チルドと冷凍の2通りの流通形態のLCAを行い、両者の環境負荷の定量的な比較を試みる。

食品廃棄を考慮した凍結食品の環境影響評価

食品廃棄を考慮した凍結食品の環境影響評価

Soret帯吸収ピーク波長を用いたマグロ赤身肉の肉色評価方法

マグロなどの赤身肉は、その鮮やかな赤色が食欲や購買意欲に大きく関係している。この赤色は肉に含まれるミオグロビンという色素タンパク質の状態に左右される。ミオグロビンが酸素と結合している状態(オキシミオグロビン)が好ましい色合いであるが、それが酸化反応によってメトミオグロビンという状態になると褐色に変色してしまう。この変色の度合いを示す指標をメト化率といい、赤身肉の重要な品質指標として知られている。現在、メト化率は肉抽出液の吸光度から算出されるが、本研究では既往の方法とは異なるSoret帯と呼ばれる400nm付近の吸収帯のピーク位置を用いて評価する手法を開発した。本手法は従来法よりも、測定方法が簡便で、再現性に優れ、測定感度が高く、なおかつ少量のサンプルでも測定可能、など多くの利点を持つ。

Soret帯吸収ピーク波長を用いたマグロ赤身肉の肉色評価方法

Soret帯吸収ピーク波長を用いたマグロ赤身肉の肉色評価方法

環境負荷低減および防災対応型シーフードのロングライフ化

震災発生以降,食品の貯蔵・品質保持技術への関心が高まっている.当研究室では災害時の備蓄という概念に加え,食品製造時における地球環境への負荷の抑制及び食に対する新たな付加価値の提供を目指して,脱水シートおよび通電加熱を用いたシーフードのロングライフ化技術を提案する.脱水シートは,塩蔵や乾燥など,従来の手法とは異なった水分コントロールによる食品の貯蔵技術であり,生鮮食品の品質の変性を抑えることが可能である.また通電加熱は,レトルトをはじめとした従来の加熱殺菌技術と比較して,環境への負荷が少なく,従来の手法に匹敵する品質の製品が製造可能である.このような,一貫した食品の貯蔵性向上をテーマとした研究は,今後の食糧事情に大きく貢献するものであるといえる.

ポスタータイトル 環境負荷低減および防災対応型シーフードのロングライフ化

ポスタータイトル 環境負荷低減および防災対応型シーフードのロングライフ化

食用キノコ水溶性成分が食品の黒変を防止する!~安全、安心な黒変防止技術~

食用キノコより抽出した水溶性成分による、食品の褐変、黒変防止技術についての研究です。
流通・販売の過程で問題となる、エビ・カニなどの甲殻類、および養殖ブリなどの褐変、黒変を防ぐことを目的としました。
養殖ブリに対しては、キノコ栽培に用いられた廃棄菌床の抽出液を飼料に添加することで、エビ・カニについては、キノコ食用部の抽出液を混ぜた海水で、活け締め前の30分間泳がせることで、その効果を確認しました。なお、強いポリフェノールオキシダーゼ活性阻害を端的に示す、すりおろしりんごの褐変を防ぐ様子についてもポスターに掲載しました。

食用キノコ水溶性成分が食品の黒変を防止する! ~安全、安心な黒変防止技術~

食用キノコ水溶性成分が食品の黒変を防止する! ~安全、安心な黒変防止技術~

海から食卓まで~安全安心な生鮮魚類の供給管理技術の開発

漁場の水質浄化・水域管理を目指し,海洋環境から単離した微生物を用いた海洋および沿岸域のバイオレメデイエーション技術を提案する.これまでに,PCBやダイオキシン等の有害かつ難分解性の有機化合物を分解する微生物を用いた環境修復方法については様々なものが既に報告されている.しかし,海洋のような塩分を含む環境下では対象となる有機化合物を分解する能力が無いか,その能力に乏しい場合が多い.これに対し,本研究で開発された耐塩性を有するSN-3 菌を用いたバイオレメデイエーションは塩存在下での環境有害物質の分解・無害化を可能にする.魚の品質は生息する環境,特に水質に大きく影響されるが,本研究で提案する方法により,魚の棲息水域を浄化することが期待される.そして,清浄化された水域で漁獲された魚を鮮度とおいしさを保ったまま消費者の食卓まで届けるためには,適切な流通管理システムが必要である.私達はこのようなニーズにも応えるために,温度履歴と鮮度を可視化するツール(バイオサーモメーターと呼称,BTMと略称)を開発した. BTMは,臭いや見た目など人の五感に頼った従来の曖昧な指標ではなく,積算温度と鮮度指標K値といった科学的指標に基づいた鮮魚管理を可能とする.上記2つの技術を利用することにより,海から食卓まで,トータルな食環境を管理し,より安全安心な魚を供給するシステムが構築できると思われる.

海から食卓まで~安全安心な生鮮魚類の供給管理技術の開発

海から食卓まで~安全安心な生鮮魚類の供給管理技術の開発

情報が食品の価値に及ぼす影響の定量化

食品生産業も経済活動である以上、適正な利益を出せなければ、持続的な生産を行うことは不可能である。利益を上げるためには、製品が高価格で多く売れることが理想的であり、そのためには、製品の付加価値を向上させることが有効である。しかし製品の付加価値を向上させるためには、生産コストの増大を伴うことが一般的であるため、コスト増大と得られる付加価値との費用対効果を見極める必要がある。しかし、付加価値を定量的に評価することが困難であるため、コストの増大を認めるか否かの判断は、経験と勘とに頼るしかないのが現状である。

本研究室ではこれまでに、環境経済学の分野で使用されるCVM(Contingent Valuation Method:仮想評価法)を用いて、食品の価値を定量化する研究を進めている。これまでの結果から、価値と品質とは必ずしも対応せず、製品に関する情報によっても強く影響を受けていると考えるに至った。本ポスターは、これを実証するために、米を対象としたアンケート調査を実行し、情報が価値に及ぼす影響の定量化を試みた結果である。この結果、「遺伝子組み替え」、「無農薬」、「20XX年産」などの情報による付加価値(マイナスの場合も含む)が金額で表されることが確かめられた。金額の値はアンケートの手法や対象によって変り得るが、このような手法の実用可能性を示したことが本発表の成果であると考える。

情報が食品の価値に及ぼす影響の定量化

情報が食品の価値に及ぼす影響の定量化