水産資源・増殖関連」カテゴリーアーカイブ

閉鎖循環式養殖に有効な「好気的脱窒装置」

⽔⽣⽣物を閉鎖循環システムで飼育する際、飼育する⽔⽣⽣物の代謝により排出されたアンモニア態窒素の処理が課題となる。アンモニア態窒素は、⿂に対して悪影響を及ぼし、悪臭の原因となる為、除去が必要である。除去のためには、硝化細菌、脱窒菌を利⽤した好気的環境の硝化槽と嫌気的環境の脱窒槽を設ける⽅法が⼀般的である。しかし、特に脱窒槽の設置に当たっては

  1. 嫌気的環境構築の困難性
  2. 硫化⽔素発⽣リスクへの危惧
  3. 脱窒菌への餌(炭素源)供給制御の難しさ

等の課題から、事業への活⽤がほとんどされていなかった。

これらの課題解決のために、研究者は多孔質セルロースを担体を用いた間欠ろ過により好気的脱窒を実現、簡易かつ⼩型の⿂介類飼育⽤の⽔処理装置を開発した。

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冷凍庫で1年間冷凍した魚から次世代が産まれました!

吉崎悟朗教授(海洋生物資源学部門)の研究グループは、1年間冷凍庫内で凍結していたニジマスから機能的な卵と精子を生産し、これらを受精することで正常な次世代個体を生産することに成功しました。本法を用いることで、絶滅危惧種を冷凍庫内で冷凍しておきさえすれば、たとえ当該種が絶滅した場合でも、現存する近縁種に冷凍魚由来の精原細胞を移植し、絶滅種の卵や精子を、ひいては受精を介して“生きた魚類個体”をいつでも再生することが可能になりました。

冷凍庫で1年間冷凍した魚から次世代が産まれました

水圏植物を原料とするバイオエタノールの製造-VII ~海藻を原料としたエタノール生産~

地球温暖化や原発事故により、自然再生エネルギーに大きな期待がかけられている。本研究は、海洋の未利用バイオマスである海藻を原料としたバイオエタノール生産を行うことを目的としている。ここでは、緑藻(アオサ)、褐藻(アカモク、スジメ)、紅藻(オゴノリ)を使用した。特にスジメに関しては、北海道水試にてアルギン酸を抽出した残渣を用いたバイオエタノール生産を行った。さらにバイオエタノール生産残渣は広島大へ送付し、メタン生産へと供することで、褐藻類のカスケード利用を試みた。
海藻の糖化により生成したグルコースは、海藻重量当たりアオサ(8.5%)、アカモク(5.5%)、スジメアルギン酸抽出残渣(20.4%)であり、カスケード利用の有効性が実証された。事前の研究で高発酵であることが実証されている各酵母株を使用したところ、海洋由来Saccharomyces cerevisiae C19株の発酵効率が最大で、原料重量当たりアオサ(5.7%)、アカモク(5.5%)、スジメアルギン酸抽出残渣(9.0%)であった。
発酵液の蒸留により、精製エタノール(約90%)をえることができた。以上、本研究により海藻原料からのバイオエタノール生産の基礎技術を確立することができた。今後は残存する糖分をより効率的に発酵する技術を開発して行く予定である。

水圏植物を原料とするバイオエタノールの製造-VII~海藻を原料としたエタノール生産~

水圏植物を原料とするバイオエタノールの製造-VII~海藻を原料としたエタノール生産~

カロテノイド高生産天然酵母の解析と魚餌料への応用

カロテノイドは養殖マダイやサケなどの体色や肉質の改善目的で餌料に添加される。しかし使用されるカロテノイドの多くは石油成分由来の合成カロテノイドであるため消費者の要求から天然由来のカロテノイドが求められる。また、合成カロテノイドは高価であり、安価なカロテノイド源が求められている。本研究室では環境からカロテノイド生産酵母を探索した結果、相模川からカロテノイド高生産酵母Sag17(Rhodotorula glitinus)を得た。さらにSag17に変異をかけてカロテノイド高生産酵母Sag17-3を得た。本研究ではSag17-3含有餌料を用いた飼育試験で有用性を調べるとともに大規模培養における効率的カロテノイド生産条件の検討を目的とする。また2010年に環境から単離したカロテノイド高生産酵母Heb3について併せて報告する。

カロテノイド高生産天然酵母の解析と魚餌料への応用

カロテノイド高生産天然酵母の解析と魚餌料への応用

酢酸洗浄合液に含まれるCd除去方法の検討

【目的】 本研究ではホタテガイ加工廃棄物を弱酸水溶液で洗浄する際に、生じた弱酸洗浄合液に含まれるCdをキレート繊維で除去する方法を検討した。
【方法】 (1)確立した条件でホタテガイ軟体廃棄物を2%酢酸水溶液で洗浄し、生じた洗浄合液を試料とした。(2)洗浄合液にキレート繊維を0.5~4%加え、2又は5時間攪拌し、Cdを取り除くためのキレート繊維添加量および処理時間を検討した。(3)使用済キレート繊維の再生にはまず20倍2MHClで処理し、続いて40倍水で3回処理し、再生済キレート繊維として使用した。
【結果】 (1)洗浄合液の窒素量は0.48%であったが、キレート繊維で処理したところ、ほとんど損失しなかった。(2)洗浄合液に含まれるCd濃度は1.77mg/kgであったが、0.5~4%キレート繊維で5時間処理した場合、Cdが93%以上除去され、Cd ppm/N1%が0.27ppm以下であった。2時間処理した場合、Cdが90%以上除去され、0.5%キレート繊維の場合を除き、Cd ppm/N1%が0.35ppm以下であった。(3)キレート繊維の使用回数を検討したところ、1%キレート繊維および2時間の処理条件で、約18回使用できることがわかった。今後高濃度Cdを含む最終廃液からCdの分離方法を合わせて、ホタテガイ加工廃棄物の全体の処理コストを抑える条件を更に追究する予定である。

 

酢酸洗浄合液に含まれるCd除去方法の検討

酢酸洗浄合液に含まれるCd除去方法の検討

 

メカジキ好漁場の選定に関する研究

マグロ・カジキ類の好漁場が広大な海洋の何処で形成されるかを正確に知る事が出来れば、漁業効率を向上させる事ができるだけでなく、資源量のより正確な推定を行う事が可能となる。海面水温情報で得られる水温に関する情報は、浮魚類が適水温の範囲で棲息する傾向をもつため、有力な漁場選定要素となる。また、比較的深い水深でも回遊を行うマグロ・カジキ類にとっては、表面の情報だけでなく、海洋内部の海水密度構造に強く影響を受けた海面の凹凸の情報(海面高度)も有益な情報といえる。加えて、海面高度情報は、海面の流れを与え得るため、大規模な流れ場の特徴と、漁場とを関係づけるのに用いることができる。

メカジキ好漁場の選定に関する研究

メカジキ好漁場の選定に関する研究

南極オキアミの食品開発への取り組み

栄養が豊富で資源量の多い南極オキアミを食品として利用する取り組みが、民間企業や国のプロジェクトとして約40年にわたって実施されてきました。
南極オキアミは、身が非常にやわらかく、食品加工が難しい等の問題点から、食品開発への道は険しいものでしたが、序々に南極オキアミを用いた食品も登場しつつあります。
日本水産は、南極オキアミ食品のパイオニアであるとともに、現在でも、その取り組みを積極的に続けています。ここでは、その取り組みの様子を少しご紹介します。

南極オキアミの食品開発への取り組み

南極オキアミの食品開発への取り組み

貝につける名札 - アバロン・タグ® -

アバロン・タグ®はステンレス製の小さな貝類用の名札です。東京海洋大学の特許技術(特許第3962808)である貝類用金属製標識を元に製品化したものです。取付簡単で錆びにくく、放流種苗の資源管理やトレーサビリティに活用できます。アバロン・タグを取り付けると、産地や放流年を明確に知ることができ、資源管理に役立てることができます。また、産地が明らかになるので、産地偽装防止や養殖アワビのブランド表示などに活用できます。

販売を開始した平成16年度以来、平成23年の初夏には累計出荷個数が200万個に達しました。そのほとんどが全国各地で種苗放流されるアワビ稚貝に取り付けられました。アバロン・タグの刻印番号はデータベース化され、番号の重複と偽造を防止し、産地等の問い合わせに迅速に回答することができます。

アバロン・タグの普及活動はNPO法人海事・水産振興会が担当していましたが、平成28年度より、アバロン・タグの製造・販売は(株)イー・ピー・アイに一元化されました。

貝につける名札-アバロン・タグ-

魚類養殖が世界を救う!!

廃棄穀類糠には生活習慣病予防効果があることを明らかにしている.現在の魚類養殖では,高エネルギー飼料が大量に使用され,水圏環境に大きな負荷を与えるとともに,大量の食資源を浪費している.本技術によって,オリザノールを含む飼料やオリザノールに富む米糠を配合した飼料を魚類に投与すると

  • 養殖魚のエネルギー代謝を改善し,体重増加を早め,飼料効率の改善にも効果的
  • 魚肉の変色を防止することが可能.食品廃棄物量の軽減できる
  • 健康機能性のあるオリザノールが魚肉に蓄積した養殖魚を提供できる

これらのことから,穀類糠やオリザノールの添加によって養殖魚の品質および付加価値向上が可能となるだけでなく,その養殖魚を用いた生活習慣病予防が可能となる.また,本技術はすでにマグロにおいても適用できることを確認済みである,マグロは原油価格高騰・漁船燃料高騰・海外の漁獲規制などによって供給量減少を余儀なくされている中,海外諸国での需要による「買い負け」も含め,我が国が安定的にマグロを確保することが困難な状況にある.その中で,本技術は効率的なマグロの養殖方法を提供でき,養殖クロマグロの「早期出荷」「安定安価供給」「安心安全」および「生活習慣病予防・改善」を確立できる.

魚類養殖が世界を救う!!

魚類養殖が世界を救う!!

水産有用甲殻類の難飼育性種苗生産技術の開発

難飼育性といわれている甲殻類のうち、成長の早いオオバウチワエビに関する種苗の大量生産技術と、事業として採算の取れる養殖技術を研究開発しています。

(生物系特定産業技術研究支援センター「イノベーション創出基礎的研究推進事業」に採択されました(平成21、22年度))

水産有用甲殻類の難飼育性種苗生産技術の開発

水産有用甲殻類の難飼育性種苗生産技術の開発

サバにマグロを産ませる:代理親魚技術の開発

海のダイヤ“マグロ”は、獲りすぎによる絶滅が心配されています。魚を育てる技術では世界トップの日本でも、体重100キロを超すマグロに卵を産ませ、それらを稚魚へと育てて海へと放流する技術はまだ完成していません。私たちは、マグロの親戚“サバ”に、マグロの卵を産ませる世界初の研究に挑戦しています。

サバにマグロを産ませる:代理親魚技術の開発

サバにマグロを産ませる:代理親魚技術の開発