海藻シワヤハズの粗抽出物が抗炎症作用を有する可能性を動物実験で見いだした。八丈島沿岸で採集したシワヤハズのメタノール抽出物を予め経口摂取することで、マウスの足に実験的に引き起こした浮腫(腫れ)の形成を有意に抑制した。浮腫は白血球を介する炎症反応によって形成されることから、局所的な過剰炎症のモデルとして抗炎症作用の評価に用いられている。さらに培養細胞を用いた実験により、炎症時に白血球から放出される炎症性マーカーである一酸化窒素(Nitric Oxide: NO)や組織壊死因子(TNFα)などの産生を抑制することが示されたことから、これら因子の放出を抑制することで、シワヤハズ抽出物が生体においても抗炎症作用を有することを示した。これら作用を指標に活性成分を単離したところ、既知物質ゾナロールおよびその類縁体が活性本体であることが明らかとなった。このゾナロールについてはin vitroでの抗菌作用とNO産生抑制作用が報告されているが、これら物質およびシワヤハズの抽出物がin vivoにおいて抗炎症作用を有することを示した報告は無く、興味深い研究成果であると考えている。